「障害を抱えて大変だけれど、もう老齢年金をもらっているから、障害年金はもらえない…」
そんなお話をよく聞きます。
確かに、老齢年金をもらっている65歳以上の方は、障害年金は原則もらえません。
障害年金は、老齢年金をまだ受給できない年齢の人(65歳以下)が病気やケガで収入が得られなくなった場合を想定した制度でもあり、公的年金には異なる2つ以上の年金(老齢、遺族、障害)を受けられるようになったときには原則、1つの年金を選択する一人一年金の原則という考え方があるからです。
しかし、65歳以上の方は特例として、障害基礎年金と老齢厚生年金の受給を選択することができます。
ここでは、65歳以上の年金の受給ケースについてお伝えします。
基礎年金と厚生年金
特例で選択ができるのは障害基礎年金+老齢厚生年金の受給です。
年金の説明でよく『年金は国民年金と厚生年金の2階建てになっている』という言葉を聞いたことがあると思います。
20歳以上、60歳未満の個人事業主や学生、無職の方は国民年金を納めているため年金受給の際には基礎年金(1階部分)を受給することができます。
70歳未満の会社員や公務員など、給与から天引きで厚生年金を納めている方は厚生年金の加入者であると同時に国民年金の加入者であるため、年金受給の際には基礎年金と厚生年金(1階と2階の両方)を受給することができます。
老齢給付と障害給付
障害基礎(厚生)年金を受給されている方が65歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるようになったときには、下の3つの組み合わせから選ぶことができます。
(※ただし障害年金2級以上かつ障害厚生年金を受給できる場合に限ります)
①障害基礎年金+障害厚生年金
②老齢基礎年金+老齢厚生年金
③障害基礎年金+老齢厚生年金(特例)
③を選択した場合、障害基礎年金は2級で老齢基礎年金満額と同額、1級では1.25倍の金額が受給できます。
障害年金を受給している方の中には、体調が悪い時に働けず納付猶予などを申請している方もいらっしゃると思います。
その後納付ができれば満額支給となりますが、追納ができなかった場合、老齢基礎年金の満額受給はできません。
その場合、基礎年金の部分(1階部分)は障害基礎年金の方が受給額が高くなる可能性があります。
65歳以上で障害年金を請求するには?
ここまで読んでいただいた方の中には、自分も特例を使って年金を受給したいと思う方もいらっしゃるかと思います。
ここからは65歳以上で障害年金の申請ができるのか解説をしていきます。
障害年金が請求できる場合
65歳以上の方が障害年金が請求できるケースは、初診日が65歳になるお誕生日の前日より前で、障害認定日に障害年金がもらえる障害の状態である場合です。
※初診日、障害認定日について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
「障害年金の初診日とは?」https://tukuru-nenkin.jp/column/4094/
「障害年金の「障害認定日」とは?」https://tukuru-nenkin.jp/column/4100/
この場合は、障害年金を請求することができ、認められれば受給することができます。
ただし、老齢基礎年金と障害基礎年金とは、同じ基礎年金であるため、両方もらうことはできませんので
どちらかを選ぶことになります。
障害年金が請求できない場合
初診日が65歳以降にある場合は、障害年金は原則請求できません。
初診日は65歳になる前にあるが、障害認定日には症状が障害等級に該当するほど重くなかったが、後になって障害等級に該当する症状になってしまった場合は対象外となります。
また、初診日が65歳より前で、障害認定日に障害年金がもらえる障害の状態であっても、その前に老齢基礎年金を繰り上げて受給していると、やはり障害年金は請求できません。
最後に
「障害があるけれど65歳を過ぎてしまった」「もう老齢年金を受け取っているから無理だろう」と思っている方でも、条件が整っている場合は障害年金がもらえる可能性があります。
障害年金は複雑でわかりにくい制度です。
諦める前に一度、社会保険労務士にご相談ください。