股関節の痛みや歩行の困難さに悩まされ、人工股関節への置換手術を検討されている方もいらっしゃいます。
実は、人工股関節に置換した場合、障害年金を受給できる可能性があることをご存じでしょうか。
障害年金は働くことができない方や、日常生活に大きな支障がある方だけが対象になると思われがちです。
しかし、人工股関節については、障害年金の認定基準に特別な取り扱いが設けられています。
ただし、人工股関節の手術を受ければ、誰でも障害年金を受給できるわけではありません。
特に、過去の初診日を証明できない場合や、老齢年金を受給する年齢になってから手術を受ける場合です。
手術後に初めて障害年金のことを知り、請求しようとしても、手続きが難しくなってしまうケースがあります。
今回は、人工股関節と障害年金の関係、申請時の注意点、早めに相談することの大切さについてご説明します。
人工股関節に置換すると障害年金3級の対象になる?
日本年金機構の障害認定基準では、股関節などの下肢の関節に人工関節や人工骨頭を挿入置換した場合、
原則として障害等級3級に認定される取り扱いがあります。
例えば、次のような病気やけがによって人工股関節への置換手術を受けた方が対象となる可能性があります。
●変形性股関節症
●大腿骨頭壊死症
●関節リウマチ
●大腿骨頸部骨折などの外傷
●その他の股関節疾患
また、人工股関節に置換した後も、重い機能障害が残っている場合には、
障害の程度によって2級以上に認定される可能性もあります。
ただし、ここで重要なのが、障害年金3級は「障害厚生年金」に設けられている等級だということです。
原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日(初診日)に厚生年金へ加入していたことが必要です。
初診日に「国民年金」へ加入していた方は、障害基礎年金の対象となります。
しかし障害基礎年金には3級がありません。
そのため、人工股関節に置換しても、必ずしも障害基礎年金の対象となるとは限らず、
障害等級2級以上に該当する必要があります。
人工股関節で障害年金の請求をするなら「初診日」は重要なポイント
人工股関節の障害年金請求では、手術日だけでなく「初診日」が非常に重要です。
初診日とは、原則として障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日をいいます。
例えば、50歳で人工股関節の手術を受ける方でも、
20代や30代の頃から股関節の痛みがあり、整形外科を受診していたというケースがあります。
障害年金では、手術を行けた病院の受診日が、必ずしも「初診日」になるとは限りません。
現在の病院を受診する何十年も前に、別の医療機関を受診していた場合、
その受診日が初診日となることがあります。
初診日に関するコラム:障害年金の初診日とは?
初診日は、障害年金の受給要件や受け取れる年金の種類を判断するうえで重要なポイントです。
ところが、年月が経過していると、当時のカルテが廃棄されていたり、医療機関が閉院していたりすることがあります。
初診日の証明が難しい場合でも、診察券や紹介状、過去の医療記録など、別の資料で初診日を確認できる可能性はあります。
しかし、資料が十分に集まらず、請求手続きが難航することも少なくありません。
そのため、人工股関節の手術を予定されている方は、手術日だけでなく、
最初に股関節の症状で病院を受診したのがいつ頃だったのかを、早めに確認しておくことが大切です。
高齢になってからの手術は特に注意が必要です
人工股関節の手術は、60代や70代など、比較的高齢になってから受けられる方もいらっしゃいます。
ここで注意したいのが、障害年金には年齢や請求時期に関する制限があることです。
例えば、障害認定日に障害等級に該当していなかった方が、
その後の症状悪化によって請求する「事後重症請求」は、原則として65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。
そのため、65歳を過ぎてから人工股関節の手術を受け、
初めて障害年金の請求を検討した場合には、事後重症請求ができないことがあります。
また、すでに老齢年金を繰上げ受給している場合には、障害年金の請求に制限が生じることがあります。
一方、65歳以上であれば一律に障害年金を請求できないというわけではありません。
過去の障害認定日時点で受給要件を満たしていた場合など、請求を検討できるケースもあります。
ただし、老齢年金との併給や選択の問題もあるため、個別の確認が必要です。
「手術が終わってから障害年金を考えよう」と思っているうちに、請求できる機会を逃してしまう可能性もあるのです。
人工股関節の手術日が障害認定日になるかもしれない
通常、障害年金の障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
しかし、人工股関節の場合には特例があります。
初診日から1年6か月以内に人工股関節への置換手術を受けた場合には、原則として手術日(挿入置換日)が障害認定日となります。
例えば、初診日から1年後に人工股関節への置換手術を受けた場合、通常の1年6か月を待たずに障害認定日を迎えることになります。
一方、初診日から何年も経過して人工股関節に置換した場合には、原則として手術日が障害認定日になるわけではありません。
その場合には、もともとの障害認定日時点の状態や、現在の状態、請求時の年齢などによって、請求方法を検討する必要があります。
特に、長年にわたって股関節の治療を続けてきた方は、手術日と初診日の関係を整理することが重要です。
障害認定日に関するコラム:障害年金の「障害認定日」とは?
仕事を続けていても障害年金を受給できる?
人工股関節に置換した後、仕事に復帰される方も多くいらっしゃいます。
「普通に働いているから障害年金はもらえないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、人工股関節については、人工関節への置換そのものが原則3級の認定基準に該当するため、
働いていることだけを理由に受給できなくなるわけではありません。
もちろん、初診日や保険料納付要件などを満たしていることが前提です。
また、人工股関節に置換した後も、歩行や立ち仕事、階段の昇降などに制限が残っている場合には、
診断書に現在の障害状態を適切に反映してもらうことも大切です。
手術が決まったら、できるだけ早くご相談ください。
人工股関節の障害年金請求では、人工関節を入れたという事実だけでなく、
初診日、年金加入歴、手術時期、請求時の年齢など、さまざまな条件を確認する必要があります。
特に、次のような方は早めの確認をおすすめします。
●昔から股関節の痛みがあり、最初に受診した病院を覚えていない方
●初診日が10年、20年以上前になる方
●60歳以上で人工股関節の手術を予定している方
●老齢年金の繰上げ受給を検討している方
●人工股関節への置換手術が決まり、障害年金の対象になるか知りたい方
手術前であれば、過去の受診歴や年金加入状況を確認し、必要な資料を集めたり早い段階から準備を進められます。
すでに手術を受けた方でも、受給の可能性がありますので、諦めずに確認することが大切です。
まとめ|人工股関節の障害年金は、早めの準備が大切です
人工股関節に置換した方は、障害厚生年金3級以上の対象となる可能性があります。
しかし、実際の請求では、初診日が何十年も前で証明できなかったり、65歳を過ぎてからの手術で請求方法が制限されたりすることがあります。
人工股関節の手術は、これからの生活をより良くするための大切な治療です。
その一方で、障害年金についても、手術前から確認しておくことで、将来の選択肢を広げられる場合があります。
つくる障害年金相談室では、人工股関節の手術を予定されている方や、すでに手術を受けられた方からの障害年金に関するご相談を承っております。
「自分は障害年金の対象になるのだろうか」
「昔の初診日が分からないけれど、請求できるのだろうか」
「もうすぐ65歳になるけれど、間に合うのだろうか」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお早めにご相談ください。
手術が決まった今こそ、障害年金について確認しておくことをおすすめします。
