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病気やケガで働けなくなった際に、生活を支える重要な制度として「傷病手当金」と「障害年金」があります。
どちらも経済的な支援を受けられる制度ですが、両方受け取ることができるのか疑問に思われる方も多いでしょう。

結論からいうと、条件によっては両方を受給することは可能ですが、多くの場合は「併給調整」という仕組みによって調整され、どちらかになります。

傷病手当金と障害年金の基本的な違い

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなった際に、休んだ日に対して支給される給付金です。支給額は給与の約3分の2相当で、働けなくなって最短で4日目から、最長で通算して1年6ヶ月間受給できます。

一方、障害年金は、国民年金や厚生年金の被保険者が障害の状態になった場合に支給される「年金」です。
請求して認められれば、最短で初診日から1年6ヶ月経過後(障害認定日)から、最長は障害の状態が障害等級に該当している限り、受給し続けることができます。

併給調整の仕組み

同一の傷病が原因で、障害厚生年金と傷病手当金と両方を受給できる場合は、「併給調整」が行われます。
「併給調整」とは、同じ傷病で複数の制度から給付を受ける場合、支援が行き過ぎないようにする仕組みです。

障害厚生年金と傷病手当金では、障害厚生年金の支給が優先されます。

とはいえ、傷病手当金の1日あたりの額と、障害厚生年金の1日あたりの額を比べ、傷病手当金が障害厚生年金より高額である場合は、その差額分は支給されます。

つまり、両方を全額受け取ることはできませんが、より高額な方に合わせて調整されるため、受給者に経済的なマイナスは生じない仕組みです。

併給調整されないケース

併給調整が行われないケースもあります。
以下のケースでは、両方を全額受給することができます。

1. 異なる傷病が原因の場合
例えば、うつ病で傷病手当金を受給し、別の病気(糖尿病による人工透析など)で障害厚生年金を受給する場合です。原因が異なれば併給調整はありません。

2. 障害基礎年金のみを受給する場合
初診日に国民年金に加入していた場合に受給する障害基礎年金は、傷病手当金との併給調整の対象外です。現在会社員で厚生年金に加入していても、初診日が国民年金加入中であれば、障害基礎年金のみの受給となり、傷病手当金は併給調整されません。

図にすると、以下のようになります。

出典:協会けんぽHPより(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/201702280964/R6shotehenno.pdf

遡及請求時の注意点

障害年金は、認められればさかのぼって受給することが可能です。

例えば、障害認定日より2、3年後に認定日からの受給が認められた場合、2、3年分まとめて支給される場合があるのです。
この時、さかのぼった期間に傷病手当金を受給していた場合は、重複している期間分の傷病手当金を健康保険に返還する必要があります。
もし障害厚生年金と傷病手当金で重複する期間が発生した場合は、初回の年金が入金されたら速やかに傷病手当金を返還しましょう。
それを怠ると忘れた頃に高額の返還依頼が来ることもあります。
慌てることのないようにしましょう。

制度を有効活用するためのポイント

傷病手当金は休業開始から最短4日目から支給されるのに対し、障害年金は請求から実際の支給までどんなに早くても3〜4ヶ月程度かかります。
空白期間を作らないためにも、傷病手当金の支給開始から1年程度経っても回復が見えない場合は、障害年金の請求を検討しましょう。

まとめ

傷病手当金と障害年金は、どちらも病気やケガで困った際の重要なセーフティネットです。
同一傷病で障害厚生年金を受給する場合は併給調整されますが、異なる傷病や障害基礎年金のみの場合は両方受給できます。制度の仕組みを正しく理解し、適切なタイミングで申請することで、経済的な不安を軽減しましょう。

詳しい手続きを知りたい場合や、傷病手当金受給から1年ほど経っていて、障害年金の申請をお考えの場合は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。