令和7年6月11日、厚生労働省が「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表しました。
これは、2024年に障害年金の不支給(年金がもらえない)ケースが急増したという報道を受けて、厚生労働省が審査状況について調査したものです。
調査は、令和6年度に決まった新規の申請1,000件と再審査された10,000件を対象に、支給されなかったケースの詳細を確認し、職員や医師への聞き取りも実施して行なわれました。
この報告書のなかから、障害年金の請求をお考えの方にとって重要なポイントを整理してお伝えします。
主な調査結果
1. 不支給率の変化
2023年度と比べて、特に精神障害での不支給率が増加しています。
・2024年度の不支給率:13.0%(前年度8.4%から大幅上昇)
・精神障害に限ると12.1%(前年度6.4%)と倍増
・身体障害(内部・外部)の不支給率には大きな変化なし
2. 精神障害で不支給になったケースの内訳
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」と照らし合わると、障害等級の目安より下位に認定され、不支給となった割合が3割を超えていました。
・37.6%:本来の等級より軽く判定され不支給
・37.6%:等級の境界線上で軽い方と判定され不支給
・12.9%:妥当な不支給判定
問題とされたこと
1. 審査書類の記載不備
・職員や医師が判定理由を十分に記載していなかった
・「なぜその判定になったか」が明確でない書類が多数存在した
2. 内部文書の問題
・審査医師の「傾向と対策」をまとめた不適切な文書が存在した
・組織的に審査を厳しくするような指示はなかった
3. 審査プロセスの課題
・職員が作成した等級案が、医師の判定に影響を与えた可能性がある
検討されている改善策
1. 審査の透明性向上
・判定理由をより詳しく記載するよう徹底
・不適切な内部文書の廃止
・審査医師の割り当てを無作為に行う
2. 複数チェック体制の強化
・不支給と判定されたケースは複数の医師で確認する
・意見が分かれた場合は委員会で審議する
3. 過去の事案の見直し
・2024年度の精神障害での不支給事案を再点検する
・必要に応じて決定を取り消し、改めて支給決定する
今後の見通しと専門家の活用の重要性
今回の調査と改善策の検討を経て、障害年金の審査基準は、より透明性が高く妥当な内容へと見直され、今後は支給判断の公正性が一層高まることが期待されます。
ただし今回の調査から明らかになったのは、ガイドラインの正確な理解と、請求者の障害の状態を適切に反映した書類の作成が、受給のための必要条件であるという事実です。
この点からも、制度に精通し、最新の審査状況を踏まえて的確な書類を作成できる専門家、社会保険労務士への依頼の重要性は、今後ますます高まっていくでしょう。
障害年金の申請を検討されている方は、まずは信頼できる社会保険労務士にご相談されることをおすすめします。