はじめに
病気やけが、またはうつ病などの精神疾患で働けなくなったとき、「障害年金」受給を検討する方も多いと思います。
このとき大切になるのが「初診日」です。初診日とは、その病気やけがで初めて医療機関を受診した日のことを指します。
初診日がわからないとそもそも障害年金を受け取れないこともあります。初診日が定まって、はじめて「保険料納付要件」や「障害認定日」など、他の要件を正しく確認できるようになりますので、初診日の特定がとても重要です。
(関連コラム「障害年金の初診日とは?」)
ところが、初めて受診してから長い年月が経過していると、「よく覚えていない」「昔の記録が残っていない」というケースもあります。そのような場合、障害年金の申請はあきらめるしかないのでしょうか?
今回は、そんなときの対処方法についてご紹介します。
まずは受診記録の確認
初診日が分からない場合、まずは最初にかかった病院に問い合わせをしてみましょう。
その病院のカルテに初診日の記録が残っている可能性があります。転院している場合は、紹介状や診療情報提供書などをもとに、受診の経過を確認できることもあります。
医療機関では、カルテの保存期間は原則5年間とされていますが、それ以上保管しているケースもあります。実際、私たちが経験した事例で、十数年前の受診状況証明をいただけたこともありました。
まずは一度、病院に確認してみるとよいでしょう。
カルテが無い場合
病院でカルテが残っていなかった場合でも、レセプト(診療報酬明細書)の開示請求で初診日を確認できることがあります。
会社員が医療機関で診察を受けると、医療機関の窓口で3割の自己負担を支払い、残りの7割は医療機関が保険者へ請求します。その際に作成されるのがレセプトです。
レセプトは、
医療機関 → 審査支払機関 → 保険者という流れで送られます。
そのため、協会けんぽや健康保険組合へ開示請求することで、初診時の病院名や通院日を確認できる場合があります。
受診状況等証明書がもらえない場合
該当する傷病で初診日が判明したら、受診した医療機関が複数あるときは原則、最初にかかった病院に「受診状況等証明書」を依頼して初診日を証明してもらう必要があります。この証明書は、当時のカルテをもとに医師が初診日の状況を記載するものであり、実際に診療した医療機関でなければ行うことができません。
しかし、以下の理由で「作成できない」と言われることがあります。
- 病院がすでに廃業しており、カルテが確認できない
- 保存期間を過ぎてカルテが破棄されている
- 医療機関の移転や統合で記録が残っていない
- 受診の記録はあるが、初診日が特定できない
このような場合、作成できない理由を確認した上で、次にかかった病院(2つ目の医療機関)に受診状況等証明書を依頼します。(2つ目の医療機関でも作成できない場合は、3つ目・4つ目の医療機関に依頼することもあります)
その際、「最初の病院で証明書が取得できなかった理由」をきちんと伝えることで、2つ目以降の病院で受診歴を証明してもらえます。
そして、最初の病院については、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出します。
申立書には、証明書を取得できなかった理由(廃院・カルテ廃棄・問い合わせたが記録なし等)を具体的に記載します。
可能であれば、以下のような「受診していたことがうかがえる資料」を添付すると、より説得力が高まります。
- 当時の診察券
- レシートや領収書
- お薬手帳や処方記録
- 健康保険証の記録
- メモやスケジュール帳の記載
これらは正式な医療記録ではありませんが、「その病院に通っていた事実」を補強する資料として有効になるでしょう。状況に合わせて、できる限りの資料を組み合わせることで、申請につながるケースも多くあります。
第三者証明(証明書類が何もないとき)
それでも初診日を確認できる書類がまったく無い場合、「第三者証明」によって補う方法があります。
これは、初診日当時の状況を知っている第三者の証明書(申立書)を提出するものです。
「第三者」とは、民生委員、病院長、施設長、事業主、隣人などが該当し、本人・同居家族・三親等内の親族は含まれません。
申立書には、初診日だけでなく、症状の経過や日常生活の様子など、当時の状況をできるだけ具体的に記載してもらいましょう。なお、第三者が医療関係者(医師・看護師等)の場合は、証明者が複数である必要はありません。
また、初診日が20歳前か20歳以降かで取り扱いが異なります。
- 20歳前の初診日:第三者証明のみでも、総合判断で認められることがあります。
- 20歳以降の初診日:第三者証明に加え、客観的資料(障害者手帳、事故証明、健康診断記録、領収書など)の添付が必要です。
まとめ
初診日が不明、または証明書類がそろわない場合でも、障害年金の申請をあきらめる必要はありません。状況に応じて、できる限りの資料や証明方法を組み合わせることで、請求が認められるケースも多くあります。
とはいえ、「どこから手を付けたらいいのか分からない」「自分で何か所も病院に確認するのは大変そう…」と不安に感じられる方がほとんどです。
そのようなときこそ、私たち社会保険労務士のサポートをご活用ください。初診日の確認方法から必要書類の整理、医療機関への問い合わせ方法まで、一緒に進めていきます。ご自身だけで抱え込まず、安心してご相談いただければと思います。
最適な申請方法を一緒に考え、受給につながるようしっかりサポートいたします。
